軽い追突事故でも腰痛は起きる!症状や慰謝料、後遺障害について徹底解説

単独事故で電柱に追突した、停車中に軽く後ろから追突された、駐車場で前から追突されたなど、一見軽い追突事故でも腰痛が起きる可能性はあります。

しかし「軽い腰痛だから、病院に行くほどじゃない……」と、病院への受診をためらう人は少なくありません。

結論として、痛みを放置することで腰痛が悪化したり、加害者に慰謝料を請求できなくなったりする可能性があります。いくら軽い症状でも事故後はなるべく早く医療機関を受診し、診断書をもらうことがおすすめです。

本記事では軽い追突事故による腰痛の症状、治療方法、治療期間の他、慰謝料、後遺障害の申請などについて細かく紹介します。

軽い追突事故でも腰痛は起きる

軽い追突事故でも腰痛は起きる

信号で停車中後ろから追突される、駐車場で前から車に追突される、電柱に単独で追突するなど、軽い追突事故でも腰痛が起きる可能性はあります。

事故直後は痛みが少なくても、後々症状が悪化する可能性も0ではありません。加害者との交渉をスムーズにするためにも、まずは整形外科など医師が在籍する交通自己治療対応の医療機関を受診することがおすすめです。

また元々腰痛を持っている場合は追突事故により、痛みが悪化するケースも考えられます。ヘルニアなど持病を持っている場合は、これらの腰痛が悪化する可能性があるため注意が必要です。

交通事故前から腰痛を持っている場合、慰謝料が減額される可能性があります。

【痛み別】軽い追突事故で起きる腰痛の症状

【痛み別】軽い追突事故で起きる腰痛の症状

軽い追突事故で起きる腰痛の症状を紹介します。痛みの例、治療方法、治療期間の目安もまとめました。詳細を見ていきましょう。

背中に近い腰の上の方が痛い

背中に近い腰の上に痛みが走る場合は、肋骨、腰椎、骨盤などを結ぶ筋肉が痛む筋肉性腰痛である可能性があります。

筋肉性腰痛とは、腰の筋肉や筋膜に対して急激あるいは慢性的に負荷がかかることで発症する腰痛です。追突事故など交通事故による急激な負荷により、腰痛が生じます。

頚椎のむちうち症と併発しやすい傾向にあり、その場合はむちうち症により頭が前に下がりやすくなることで腰の筋肉が伸び症状が長引きやすくなるため注意が必要です。

また、運転姿勢が良くない場合は追突事故の衝撃をより強く受ける傾向にあるため、腰痛を発症しやすいと言われています。

通常は数日で強い痛みがひき、1ヶ月程度で完治します。しかし痛みが強い時期に腰に負担がかかる生活をしていると痛みが慢性化する可能性が高まるため、安静にすることが大切です。

前かがみになると痛い

前屈みになると痛みが強くなる場合は、椎間板を損傷することで生じる腰痛である椎間板損傷の可能性があげられます。椎間板は椎体と椎体の間にあり、衝撃吸収の役割を果たしている組織です。

この組織は常に力学的負担を受けている部位で、日常生活においても猫背や中腰の状態で強く負荷がかかります。治療において負荷を分散させることは重要で、姿勢を正したり、体幹筋の筋力効果を行ったり、ストレッチをしたりして痛みを軽減させていきます。

安静にすることで痛みは引きますが、運動をすることで再発する可能性が高いです。適度なリハビリを続けず放置すると腰椎椎間板ヘルニアに移行する可能性があるため、早期治療が重要です。椎間板に変形が見られる場合は完治は見込めず、痛みを緩和することが重要となります。

腰を反らすと痛い

追突事故後に腰を反らせると痛みが生じる場合は、椎間関節損傷の可能性があります。

椎間関節とは椎骨と椎骨の間にある関節です。周囲には痛みを感じ取るための侵害受容器が多く存在しています。この部分に炎症が起こるなどの症状があれば、椎間関節損傷である可能性が高いです。

腰を反らすと痛みを感じる、前屈みになって戻すときに時間がかかるなどの症状がある場合は、椎間関節損傷の可能性が高いといえるでしょう。

治療方法としては、椎間関節ブロック注射、リハビリ、手術治療等があげられます。骨に変形が起きている場合は完治は見込めず、症状の緩和が目的となります。

骨盤やお尻に近い腰痛

追突事故後から骨盤やお尻周辺が痛むのであれば、仙腸関節損傷である可能性が高いです。

仙腸関節とは仙骨と腸骨の間にある関節です。仙腸関節付近が痛むケースが一般的ですが、お尻、脚の付け根、かかとなどが痛むケースもあります。

まずは安静、痛み止めの服用、骨盤ゴムベルトなど保存的な治療がまずは行われることが一般的です。これらで効果が見られなかった場合、注射(仙腸関節ブロック)治療等が行われ、その後も痛みが改善しない場合は手術となります。

この症状は骨盤の左右の高さが異なる人、片足でブレーキを踏んだ際に追突事故を起こした人などが起こしやすいです。

軽い追突事故での腰痛も慰謝料を受け取れる?

軽い追突事故での腰痛も慰謝料を受け取れる?

軽い追突事故で生じた腰痛も慰謝料を受け取れる可能性があります。完治または症状固定までの治療期間に応じた慰謝料の請求が可能です。

腰椎捻挫による慰謝料の相場は、症状の程度、通院日数により変動します。本記事では、腰椎捻挫による入通院が生じた場合の慰謝料、重症の場合の慰謝料についてまとめました。

腰椎捻挫による腰痛の入通院慰謝料相場

腰椎捻挫による腰痛により生じた入通院の慰謝料の相場を、以下の表にまとめました。交通事故における慰謝料を算出するために利用される基準は、自賠責保険基準任意保険基準弁護士基準の3つです。

基本的には必要最低限の保障である自賠責保険基準が最も慰謝料の金額が安く、弁護士基準が高くなります。まずは弁護士基準で算出した慰謝料相場を紹介します。

あくまでも弁護士基準で算出した場合の金額であり、実際に加害者が加入している自賠責保険もしくは任意保険会社から提案される金額ではありません。

通院月慰謝料
1ヶ月19万円
2ヶ月36万円
3ヶ月53万円
4ヶ月67万円
5ヶ月79万円
6ヶ月89万円

自賠責保険基準の場合は、4,300円/日の計算となります。任意保険基準は各保険会社が独自で定めているため、加害者が加入している任意保険会社の基準を確認することがおすすめです。

腰痛が重症の場合の慰謝料相場

軽い追突事故でも骨折をするなど重症の場合は、先ほど紹介した慰謝料よりも高い金額となるケースがあります。重症の場合の慰謝料相場を、以下の表にまとめました。

通院月入院0日の場合入院1ヶ月の場合
0ヶ月0万円53万円
1ヶ月28万円77万円
2ヶ月52万円98万円
3ヶ月73万円115万円
6ヶ月116万円149万円
9ヶ月139万円170万円
12ヶ月154万円183万円

腰椎捻挫により通院したものの症状が良くならず、しびれなどの神経症状が出る場合後遺障害認定をされるケースがあります。

以下の表では、後遺障害12級・14級と認定された場合の後遺障害慰謝料についてまとめました。

基準後遺障害12級後遺障害14級
自賠責保険基準93万円32万円
任意保険基準100万円40万円
弁護士基準290万円110万円

軽い追突事故での腰痛も後遺障害として認定される?

軽い追突事故での腰痛も後遺障害として認定される?

軽い追突事故により生じた腰痛であっても、後遺障害に認定されるケースもあります。後遺障害とは、交通事故で生じた後遺症の中で、労働能力の低下が認められたうえで自賠責保険の後遺障害等級に該当する症状を指します。

このパートでは、腰痛で認定されるケースがある後遺障害等級、慰謝料、逸失利益の慰謝料について紹介します。

腰痛で認定されることがある後遺障害等級

軽い事故で生じた腰椎捻挫は、14級9号もしくは12級13号に分類されるのが一般的です。

局部に神経症状を残すものが14級9号、局部に頑固な神経症状を残すものが12級13号となります。級の数値が低くなるほど症状は重度になり、14級9号よりも12級13号の方が症状は重いといえます。

いずれもしびれなどの神経症状が残る場合に適用され、後遺障害が認められた場合には後遺障害慰謝料や逸失利益が請求可能です。

入通院慰謝料とは別枠の金額なので、損害賠償額全体の大幅な増額が見込めます。

腰痛の後遺障害への慰謝料相場

後遺障害12級・14級と認定された場合の後遺障害慰謝料についてまとめました。

基準後遺障害12級後遺障害14級
自賠責保険基準93万円32万円
任意保険基準100万円40万円
弁護士基準290万円110万円

自賠責保険基準だと必要最低限の保障となるため、慰謝料の金額は小さい傾向にあります。弁護士基準であれば、自賠責保険の数倍の金額が見込まれるでしょう。

逸失利益の慰謝料相場

追突事故により生じたケガ(腰痛など)で労働が以前よりも円滑に行えず減収となった場合、加害者に対して損害賠償の請求ができます。後遺障害認定された場合には、逸失利益の慰謝料請求も視野に入れておくことがおすすめです。

ただし実際に収入に変動がなければ請求はできません。

逸失利益の慰謝料は、基本的に「基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」で求められます。

例えば30歳未満の男性で事故後の症状固定が29歳、前年度の年収が500万円、就労可能年限67歳、後遺障害等級14級(労働能力喪失率5%)だった場合は、ライプニッツ係数が16.868となり、421.7万円が慰謝料相場となります。

軽い追突事故での腰痛で後遺障害認定を受けるためにすべきこと

軽い追突事故での腰痛で後遺障害認定を受けるためにすべきこと

軽い追突事故が起きた直後は腰痛の症状が出てこなくても、後々症状が悪化する可能性があります。事故後時間が経過してからだと事故との因果関係が説明できないトラブルになるため、痛みがなくても事故後なるべく早く整形外科を受診しておくことがおすすめです。

詳細を見ていきましょう。

交通事故後すぐに整形外科を受診する

軽い追突事故が起きた場合には、すぐに整形外科を受診しておきましょう。事故後に交通自己治療に対応した整形外科を受診し診断書を発行することで、慰謝料をスムーズに受け取れる可能性が高くなります。

整骨院や接骨院は医療機関ではないため、診断書の発行ができません。初診は必ず医師が在籍する整形外科などの医療機関を受診し、医学的な観点から症状をよく診察してもらい診断書を作ってもらうことが必要不可欠です。

月1回以上定期的に通院し症状をよく見てもらうことで、後遺障害認定に必要な後遺障害診断書の発行をしてもらえます。

CT・MRI検査などで画像診断する

後遺障害の手続き(被害者請求)においては、病院から発行される診断書の他、レントゲン写真、CT、MRIなどの写真の添付も可能です。

被害者に有利な情報を添付できれば、保険会社から支払われる保険金が高くなる可能性があるため、写真を残しておくと良いでしょう。

ただし腰椎捻挫はレントゲンやMRIで異常が認められないケースも多いです。

ただし交通事故によって生じた他の症状を見逃さないためにも、腰椎捻挫以外によって生じる痛みである可能性を潰すためにもこのような検査は受けておくと良いでしょう。

神経学的検査を受ける

CT、MRIなどの検査で異常が認められない場合は、神経学的検査を受けられるケースがあります。神経学的検査とは脳、脊髄、神経の機能調査を目的とし、中枢神経や末梢神経などすべての神経を調べるための一連の検査です。

意識・精神状態、運動・感覚機能、歩行能力等を調べます。検査の例を、以下の表にまとめました。

検査名内容
ジャクソンテスト神経根に障害が残っていないかをチェックするための検査。むちうち等の症状を裏付けるために行われる。姿勢を正して座る被験者の後ろに検査実施者が立ち、被験者の頭を倒した状態で上から下に押し上げチェックする。
スパークリングテスト姿勢を正して座る被験者の後ろに検査実施者が立ち、被験者の頭を掴みしびれが出ている側に傾ける。その後、さらに後ろにそらして圧迫しチェックする。
腱反射テスト腕の腱を、ゴムハンマーでたたき生じる反応をチェックする方法。
筋電図検査
神経伝達速度検査
筋肉や神経に対して電気の刺激を与えて、筋肉や神経に異常がないかをチェックする方法。
筋萎縮検査上肢(または下肢)の周囲径を計測し、筋委縮が生じていないかをチェックする方法。

軽い追突事故での腰痛に関するよくある質問

軽い追突事故での腰痛に関するよくある質問

最後は軽い追突事故で生じた腰痛に関する質問をまとめました。

持病が悪化した場合も後遺障害認定を受けられる?

原則後遺障害認定は、交通事故によって生じたケガ・症状のみに適用されます。そのため追突事故前から発症していた持病が追突事故により悪化した場合は、後遺障害として認定されない可能性があります。

後遺障害認定されたとしても、事故前から発症していた持病分が減額されるケースがほとんどです。

基本的には事故前からの症状、事故後の日常生活において生じた症状については認定されません。

交通事故前から腰痛の症状があると慰謝料が減る?

交通事故前から腰痛を持っている場合は、慰謝料が減額される可能性があります。

慰謝料を受け取るためには、交通事故によって症状がでてきたことを証明しなければいけません。そのために大事なのは、「事故前から明らかに症状が悪化した」ことの証明です。基本的に、損害賠償額が減額される可能性があることを覚えておきましょう。

治療費の支払いが打ち切られそうな場合どうしたらいい?

腰痛で通院をしている場合は、3ヶ月ごろに加害者の保険会社から治療費の打ち切りの打診があるケースがほとんどです。症状の改善が見られない治療に対しての治療費の捻出を抑えたいと考えるのが、一般的な保険会社といえます。

打ち切りを打診された際にまだ治療に納得していない場合は、症状固定までの具体的な時期を医師から教えてもらうことがおすすめです。

医師が提示した時期まで、治療費の支払いを受けられるようになる可能性が高まります。もし治療費が打ち切られた場合は一時的に被害者が立て替え、後から任意保険会社に請求する形になります。

腰椎捻挫による腰痛の治療法や治療期間は?

腰椎捻挫による腰痛の治療法を、以下にまとめました。

  • 薬物療法(鎮痛剤や筋弛緩薬、シップ等)
  • 安静
  • 装具療法(コルセット等)
  • リハビリテーション
  • 手術治療

リハビリテーションでは、徒手療法、物理療法、運動療法、装具療法などが行われます。基本的には服薬や安静で症状の寛解を目指します。

治療期間はケガの程度によりさまざまです。筋肉性腰痛は基本的にきちんと安静にすれば1ヶ月ほどで完治が見込めます。ただし関節が変形するなどの症状の場合は、完治は見込めません。

それぞれの腰痛の症状や治療方法、治療期間に関しては「【痛み別】軽い追突事故で起きる腰痛の症状」も参考にしてください。

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