交通事故では事故の強い衝撃により、むちうちになってしまうことも多いです。
しかし、むちうちになってしまったとき、どうすればいいのか分からない人は多いでしょう。
何も知らないままでいると妥当な慰謝料を受け取れないかもしれません。
そこで今回は、むちうちでの診断書の種類や交通事故による慰謝料取得のための注意点などを徹底解説していきます。
診断書の種類や提出期限についても説明していきますので、チェックしていきましょう。
むちうちの診断書は取ったほうがいい?
診断書とは、病気や怪我の状況や程度について医師が証明する書類です。
加害者の保険会社へ慰謝料を請求するためには、診断書を作成し、交通事故とむちうちの関連性を証明する必要があります。
そのため、交通事故でむちうちになった場合は、診断書を作成しましょう。
ただし、ほとんどの場合は加害者側の保険会社が支払いを行う(一括対応)ため、被害者側が医師へ診断書の作成を依頼する必要はありません。
しかし、保険会社が一括対応をしておらず、被害者側による治療費の立て替えが必要な場合は、被害者側で診断書の作成をお願いし、提出する必要がある場合もあります。
その他、後遺障害が残った場合には、後遺障害診断書も必要になるため、医師に作成を依頼しましょう。
むちうちの診断書の日数には期限はある?
診断書の提出は警察と保険会社に行います。
どちらも提出期限はとくに設けられていません。
しかし、警察に診断書を提出する場合は、事故が発生してから10日以内が望ましいとされています。
できるだけ早めに病院を受診し、診断書を作成しましょう。
一方、保険会社へ診断書を提出する場合は、保険会社の指示に任せれば問題ありません。
ただし、保険会社への診断書の提出期限は3年です。
仕事や学校などが忙しく、病院への受診が遅れそうな場合は、保険会社へその旨を伝えておきましょう。
むちうちの診断書の種類と必要なタイミング
むちうちの診断書には種類があり、必要なタイミングもいくつかあります。
そこでここからは、むちうちの診断書の種類と必要なタイミングを解説していきます。
損害賠償請求の際
自賠責保険を利用してむちうちの治療や施術を受けるには、保険会社へ診断書の提出が必要です。
損害賠償を受ける方法は「一括対応」と「被害者請求」の2種類が存在します。
請求方法 | 提出方法 |
一括対応 | 加害者の任意保険会社が、請求を行う方法 診断書は保険会社が提出する |
被害者請求 | 被害者自身が加害者の自賠責保険に請求する方法 被害者が自賠責保険へ医師の診断書を提出する |
ほとんどの場合では一括対応が行われるため、被害者は医療情報を任意保険会社に開示するための同意書が必要です。
一方、被害者請求の場合は、被害者側が保険会社へ診断書を提出する必要があります。
先ほども解説した通り、保険会社への診断書の提出期限は3年ですので、提出し忘れないように注意しましょう。
期限を超えると慰謝料や治療費を請求できなくなってしまいます。
後遺障害等級の申請の際
後遺障害等級の申請を行う際にも、診断書は必要です。
ただし、普通の診断書とは異なり、症状が後遺障害であることを証明するための「後遺障害診断書」が必要になります。
これ以上治療を続けても症状が改善しない「症状固定」という状態になった後、後遺障害診断書を作成し、後遺障害等級の申請を行います。
症状固定と判断されると治療費などの支払いは打ち切られますが、後遺障害等級の申請を行えるのが特徴です。
後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求ができます。
ただし、後遺障害等級認定や損害賠償請求は症状固定から3年が時効です。
示談交渉などの時間を考えると2年以内に後遺障害等級認定の申請を済ませたほうがいいでしょう。
勤務先に提出の際
むちうちによって仕事をするのが難しい場合、一般的に勤務先に診断書を提出します。
仕事を休んだことで収入が減った場合、「休業損害」として加害者側へ請求が可能です。
むちうちによる休業損害を受け取るには、医師にむちうちによって就労が困難な状態であること、休むしかないことを、診断書に記載してもらい、客観的に症状を証明する必要があります。
医師にきちんと症状を伝え、就労が難しいことを診断書に書いてもらいましょう。
診断書なしで仕事を休んだ場合、請求の対象外となってしまいます。
その分収入が減ってしまうため、必ず医師に診断書を作成してもらい、提出するようにしましょう。
物損事故から人身事故に切り替える際
物損事故から人身事故に切り替える際には、警察へ診断書を提出する必要があります。
物損事故のままでは、むちうちの治療費や慰謝料の請求ができません。
また、実況見分が行われず、過失割合などで揉めた際、証拠の提出が不可能になってしまう可能性があります。
警察へ何日までに診断書を提出しなければならないという決まりはありませんが、早めに診断書を提出しましょう。
交通事故から時間が経てば経つほど、交通事故とむちうちの関連性を疑われる可能性があります。
「このむちうちは交通事故によるものではない可能性がある」と判断されてしまうと、人身事故への切り替えは難しいでしょう。
特別な特別な事情がない限り、速やかに診断書を提出することが大切です。
むちうちの診断書は伝え方が重要
むちうちの診断書は伝え方が非常に重要になります。
骨折とは違い、医師からむちうちの症状を目で確認することができません。
そのため、きちんと言葉で症状を説明できないと医師に現状が伝わっていない可能性があります。
ここからは、むちうちの診断書について見ていきましょう。
むちうちの診断書の主な記載内容
むちうちの診断書の主な記載内容は以下の通りです。
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- 電話番号
- 事故日時
- 事故場所
- 事故状況
- 診断名(傷病名)
- 症状
- 治療内容
- 治療期間
- 医師の所見
病院によって書式が異なるため、省略されることもありますが、一般的に診断書にはこのような内容が記載されます。
また、病名は以下のようになることが多いです。
- 外傷性頚部症候群
- 頚椎捻挫(頸椎捻挫)
- 頚部打撲
- 頚部挫傷
むちうちの代表的な症状
むちうちの代表的な症状は以下の通りです。
- 首の痛み、痺れ
- 首の運動制限
- 上肢の痛み、痺れ
- 上肢の知覚障害
- 握力低下
- 頭痛
- めまい
- ふらつき感
- 吐き気
- 耳鳴り
- 眼のちらつき
- 眼のかすみ
- 眼精疲労
- 倦怠感
症状には個人差があるため、1つの症状だけでなく、複数の症状に悩まされる人も多いです。
一見むちうちと関係なさそうな症状もあるため、交通事故後に不調を感じた場合は「むちうちとは関係ないかも」と思わず医師に症状を伝えましょう。
また、治療により症状の改善が見られず、後遺症が残る人も存在し、後遺症が残った場合は後遺障害認定を受けることで後遺障害慰謝料や逸失利益の請求ができます。
症状の改善が見られず、後遺症が残った場合は後遺障害等級の申請を行いましょう。
むちうちの診断書作成時に伝えるべきポイント
むちうちは骨折などと異なり、CTやMRIなどの画像検査で客観的に症状を見ることができません。
そのため、医師は自分の目で症状を確認することができず、患者の言うことを頼りに診断書を作成することになります。
治療を行う場合だけでなく、後遺障害認定を受ける場合も、正確かつ具体的に症状を伝えることは大切です。
症状が重度なのにも関わらず上手く伝えることができなかった場合、医師が軽度としてしまい、治療費の早期打ち切りや妥当な後遺障害等級に認定されない可能性があります。
交通事故でむちうちになってしまった場合、痺れや吐き気、耳鳴りなど具体的にどんな症状が現れているのか医師に説明しましょう。
また交通事故の後に症状が出たことをきちんと伝えることが大切です。
むちうちの診断書取得時の注意点
むちうちの診断書を取得する時にはいくつかの注意点が存在します。
診断書取得時に気をつけないと慰謝料が減額されてしまったり受け取りに時間が掛かったりしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
早速、注意点を見ていきましょう。
むちうちの診断書を出せるのは医師のみ
むちうちの診断書を作成できるのは医師のみです。
そのため、整形外科や病院でしか診断書を手に入れることができません。
整骨院や接骨院に通院している場合、施術証明書の作成はできますが、警察や保険会社へ診断書として提出することはできないため注意しましょう。
病院を受診しなかった場合、治療費や慰謝料の支払いに使用ができる可能性があります。
交通事故でむちうちになった場合は、必ず病院を受診し、診断書を作成してもらいましょう。
整形外科や病院への通院を続ける
整骨院に通院するのは問題ありませんが、整形外科や病院への通院をやめてはいけません。
整骨院を利用したい場合は、必ず整形外科や病院との併用が大切です。
整骨院のみに通院してしまうと治療費や施術費を払ってもらえなかったり慰謝料を減額されてしまったりする可能性があります。
医師の診断を受けた上で、整骨院に通いましょう。
また、医師の診察や検査を受けないことで、交通事故による怪我を見過ごしていたり後遺症が残っても補償が受けられなくなったりする場合もあります。
整骨院に通う際は、必ず整形外科や病院への通院も続けるようにしましょう。
むちうちの診断書作成には時間がかかる
むちうちの診断書作成には数週間かかるのが一般的です。
その日のうちに作成できる簡単な診断書も存在しますが、記載する内容が多ければ多いほど診断書の作成には時間がかかります。
作成を依頼した日に受け取れる場合はかなり少ないため、2~3週間ほどはかかると見積もって、余裕をもって診断書の作成をお願いしましょう。
むちうちの診断書作成の費用を請求する
医師による診断書の作成には、文書料という費用が発生します。
病院によって金額は異なりますが、一般的に1通あたり5,000円程度で作成してくれます。
診断書の費用は損害賠償として加害者側の保険会社への請求が可能です。
加害者側の保険会社が直接病院に支払ってくれる場合が多いですが、被害者が費用を立て替えた場合は、領収書を発行してもらい、後ほど請求できます。
また、後遺障害診断書の作成も病院によって異なりますが、5,000円~10,000円程度が一般的です。
こちらも加害者側の保険会社に請求ができ、費用を立て替えた場合は領収書を大切に保管しましょう。
弁護士や専門家にも相談する
むちうちの症状は客観的に把握することが難しく、医師に症状を伝えるのも大変です。
そのため、診断書を受け取ったらきちんと症状が書かれているか、不備はないか、交通事故に詳しい弁護士や専門家にも相談しましょう。
特に後遺障害認定を受ける場合は、後遺障害診断書に症状などをきちんと記載してもらう必要があります。
後遺障害の等級は1級~14級に区分されており、後遺症があったとしても基準を満たさなければ後遺障害として認定されません。
弁護士や専門家に相談することで、妥当な後遺障害等級に認定してもらえる可能性が高まります。
後遺障害認定の申請手続きを行う前に交通事故に詳しい弁護士や専門家にチェックしてもらうといいでしょう。
むちうちの診断書に関するよくある質問
ここからはむちうちの診断書に関するよくある質問を解説していきます。
ここで解決できなかった疑問は交通事故に詳しい弁護士や専門家へ相談しましょう。
後遺障害診断書を書いてくれない場合は?
後遺障害認定を受けるためには、後遺障害診断書が必要です。
しかし、すべての医師が交通事故治療や後遺障害に詳しいとは限りません。
そのため、後遺障害診断書の書き方を把握していないなどの理由により後遺障害診断書の作成をしてくれない医師も存在します。
また後遺障害診断書は等級を決める重要な書類のため、書き方が間違っていたり不備があったりする場合、責任を問われてしまう可能性があります。
そういった事態を避けるため、後遺障害診断書の作成をしない選択をする医師が存在するのです。
後遺障害診断書を作成してくれないという事態を避けるべく、交通事故の対応になれていない病院や医師を避けるような病院選びが重要になるでしょう。
診断書と同意書の違いは?
診断書と同意書には以下の違いがあります。
診断書 | 病気や怪我の状況や程度について医師が証明する書類 |
同意書 | 被害者の医療情報を病院から保険会社への開示に同意をするための書類 |
交通事故に遭った場合は、加害者側の保険会社から、同意書の記入を求められます。
この同意書に記入することで、病院が加害者側の保険会社に治療内容や治療費の詳細を伝えることが可能になります。
その結果、病院でかかった治療費を加害者側の保険会社が直接、支払えるようになり、面倒な手続きが必要ありません。
同意書に記入しなかった場合は加害者側の保険会社が治療費の支払いを行えず、被害者が治療費を立て替え、後から加害者側の保険会社へ請求する手間が発生します。