ポリープは、胃潰瘍や炎症などが原因で起こる症状です。
放っておくと数が増え、胃がんや大腸がんを発症する危険があるため、定期的な胃カメラや大腸カメラで検査を受ける必要があります。
しかし、ポリープ切除の手術にどのくらい時間がかかるのか不安だったり、仕事の都合でなかなか受診できない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、内視鏡でポリープを切除する目的と施術方法、術後の過ごし方について解説します。検査を受けるかどうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
内視鏡ポリープ切除の目的
ポリープとは、粘膜の表面が盛り上がりこぶのようになる症状のことです。
胃や大腸、咽頭などによく起こり、病名ではありません。何らかの病気が原因で、粘膜が押し上げられてしまっている状態のことをいいます。
そのため、ポリープを作り出した病気そのものを治療する必要があります。ポリープは悪性のものと良性のものがあり、良性のものならば残しておいても健康に影響を与えることは少ないとされています。
しかし、悪性のポリープのなかには放っておくと数が増えていったり、がんに変化していく場合があります。そのため、胃がんや大腸がんのリスクを減らすためにも、胃カメラで見つかったポリープは切除する必要があります。
切除したポリープは生検にかける
悪性と良性の判断には、生体検査という切除した患部を利用した検査が必要です。
正式には生体組織診断といい、組織を顕微鏡で観察することで病原菌の存在やがん細胞の有無を確かめます。
生体検査によってポリープを作り出している原因が判明したら、医師の判断で治療の方針が立てられます。例えば胃のポリープの場合、ピロリ菌がいるとポリープができやすいことが確認されています。
そのため、まずはピロリ菌除去の治療を行い、変化の様子を観察します。数が減り小さくなっていくようなら、そのまま状態を見守り続ける対処が取られます。
がんならば抗がん剤を用いるのか、先進医療を選択するのか、患者さんの意向を踏まえて入院などの日程が組まれます。
症状次第では仕事を辞める、もしくは行けなくなることもあります。
良性のものだと診断されれば、ある程度そのままにしていても問題はありません。しかし、経過観察のための定期的な胃カメラが推奨されています。
人間ドッグなどで内視鏡検査を行うと、保険が適用されず実費負担になります。仕事や日常を含めて、綿密にスケジューリングしておく必要があります。
ポリープができる原因
ポリープは、胃や腸の粘膜が傷つくことで発症します。
大腸の場合、ポリープのできやすさは遺伝が原因であるといわれています。大腸のポリープに異常を起こす遺伝子のアクシデントのパターンは、いくつか確認されています。
胃のポリープの場合は、脂質の多い食事や大量の飲酒、添加物の多い食品をよく食べるなどの生活習慣が主な原因です。粘膜を刺激しすぎて胃壁のただれ(びらん)が起こり、それが修復される過程でポリープが形成されます。
そのため、糖尿病や肥満の方はポリープができるリスクが高くなります。
ポリープは無症状なので検査が必要
ポリープができていても、基本的に自覚できるような痛みや違和感はありません。
多くの場合、ポリープは大きくなりすぎて周辺に影響を与えるときに発見されます。大腸の場合は、直腸や大腸の動きが阻害され血便、便秘が起こることがあります。こうした症状があれば、ポリープの疑いがあると思ってよいでしょう。
胃にできるポリープの場合は、慢性的な胃の不快感や胃炎を発症することで発見につながることが多いです。また、急な腹痛(みぞおちのあたり)や食欲不振も、ポリープができた影響という場合があります。
食後の胃の満腹感、胃もたれ、胃痛などが多発する場合は、内視鏡検査を受けてみることを推奨します。
自覚症状のないポリープは、大きな病気の原因になることもあります。定期的な内視鏡検査が必要なのは、こうした理由からです。
ポリープを引き起こすがん以外の病気
ポリープの原因は、すべての発祥要因が確認されているわけではありません。なかには、がん以外の病気や原因不明のものもあります。
原因が分からない場合、考えられるのはストレスです。
仕事が激務であったり、超過勤務が続いていたり、人間関係がうまくいっていなかったりすれば、まずは生活環境を変えることが求められます。
また、家族性大腸ポリポーシス症という、大腸ポリープが起こりやすい家系の存在も確認されています。
ポリープを切除する4つの方法
ポリープ切除の方法は、大きさに合わせて主に4つに使い分けられています。
ポリープが大きい場合は傷口も大きくなるため、出血に注意して施術しなくてはいけません。小型のポリープはワイヤーによる切除、大型のポリープはレーザーにより施術が行われます。
また、小さすぎるポリープにはクリップ鉗子を用いることもあります。ここでは、具体的な方法の違いについて紹介します。
内視鏡ポリペクトミー(コールドポリペクトミー)
ワイヤーで作った輪をポリープに引っかけ、輪を絞っていくことで切り取る方法です。5mm~10mm程の小さなポリープを取り除くために用いられます。
後述の高周波スネアよりも出血のリスクが少なく、抗血栓薬(血液を固める血小板の働きを抑える薬。高血圧や糖尿病の治療に用いられる)を服薬している方でも、安全に施術を受けることができます。
高周波スネア
ワイヤーで作った輪(スネア)をポリープにひっかけ、熱を加えることでポリープを焼き切る方法です。大きなポリープを切除するときに用いられ、ポリープを切り取りながら血管の傷を焼いて塞ぐことができるため、出血を少なくできます。
しかし発生頻度は少ないですが、症状が重くなると患部に穴が開く穿孔という状態になることがあるため、注意が必要です。
クリップ状鉗子
ホットバイオプシー鉗子やスネアを使い、切除と止血を同時に行う方法です。ポリペクトミーで切除しきれない小さなポリープに対して用いられます。
内視鏡の先に取りつけた鉗子でポリープをつまみ、切り取ると同時に胃、大腸壁にクリップが残って圧迫止血をします。
クリップは傷が塞がると便とともに排出されるため、身体に与える影響はほとんどありません。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
盛り上がりの小さなポリープ、または早期のがんを確実に取り除くために用いられます。
大腸がんの場合、粘膜層と呼ばれる腸の表面から発生し、成長するにつれてポリープを形作ります。
患部と粘膜層の下にある粘膜下層に生理食塩水を注入し、ワイヤーを掛けてポリープを切り取ります。こうすることで、切除によって腸壁が傷つき穴が開くことを防ぎます。
ポリープを切除した後の過ごし方
ポリープの切除手術をした後は、最低3日程度の安静が推奨されています。デスクワークならば翌日から可能であり、日帰り入院もできます。
肉体労働や力仕事をしている患者さんの場合は、1週間程度は仕事を休む必要があります。職種によってはすぐに休暇を取れないことも考えられるため、事前に職場に相談しておくと安心です。
また、軽い運動、特に筋力トレーニングやランニング、ゴルフなど、お腹に力が入るスポーツは避けなくてはいけません。
そのほか、飲酒やサウナなど、血流がよくなり出血するリスクが大きくなる行為は、なるべく避けるようにしましょう。
ポリープの大きさで予後が変わる
ポリープは小さいもので数ミリ、大きいもので3センチ程度です。小さいポリープを切除した場合は、出血や傷のサイズも小さいため、経過を見ながらすぐ日常生活に戻れます。
しかし、ポリープが複数あったり、大きさが2センチ以上ある場合は検査も含めて数日間入院しなくてはいけません。
胃カメラ検査でポリープが見つかり、その場で切除できない大きさ・個数のときは、別の病院に入院しなくてはいけないこともあります。
切除の回数が増えれば傷も増えます。ケースバイケースですが、1週間以上様子を見なくてはいけないこともあり、注意が必要です。
食事の注意
胃や大腸のポリープを切除してから5〜7日間は、脂っこい食事や刺激の強い食品は避けるようにしましょう。
アルコールや揚げ物、肉類、ラーメンやカレーなどは、粘膜を刺激してしまうため特に控える必要があります。
うどん、おかゆ、味噌汁のような薄味の和食が術後の食事に適しています。
食事をした後に血便、腹痛、発熱などが見られた場合は、すぐ切除を行った病院に相談し、診察を受けるようにしましょう。
まとめ
内視鏡によるポリープの切除は、胃がんや大腸がんになるリスクを減らす目的があります。
ポリープの原因はがんだけではないため、放っておいても問題ない場合もあります。しかし、がんが原因で胃壁や腸壁にポリープができている、そのほかの病気でポリープが大量にできてしまい、消化吸収を阻害することもあります。
自覚症状のないポリープは、胃カメラで発見するしかありません。定期的に人間ドッグを受けている方は、胃カメラも検診の項目に入れることを検討してください。
おうえケアとわクリニックでは、胃カメラと大腸カメラでポリープ切除を行っています。
痛みの少ない検査や、患者さんの要望を優先した診療を行っています。同日中に胃カメラと大腸カメラを実施するなどの対応も可能です。
胃の不調や過去の病気で不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。