内視鏡とバリウムはどう違う?それぞれの特徴とおすすめの検査方法を紹介

内視鏡検査(胃カメラ)とバリウム検査(胃透視検査)は、どちらも消化管の内腔側の情報を読み取る検査です。主に胃がんや潰瘍などの胃の疾患の発見に役立ちますが、どちらを受けたらよいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

一般的に、内視鏡検査は「オエッ」となる嘔吐反射があるため、つらいというイメージを持たれやすい検査です。

一方のバリウム検査も、バリウム(造影剤)を飲んだり、検査中にゲップを我慢しなければならなかったりなど、人によってはつらいと感じることもあるかもしれません。

精度については、内視鏡検査の方が優れています。特に早期の胃がんはバリウム検査では分かりにくい場合もあるため、できれば内視鏡検査を受けた方が安心です。

この記事では、内視鏡とバリウムの違いや、内視鏡検査を選ぶべき理由を紹介します。どちらの検査を受けるか悩んでいる方や、それぞれの違いを知りたい方は参考にしてください。

内視鏡とバリウムの違いとは

内視鏡 バリウム

内視鏡検査とバリウム検査は、どちらも消化管の異常を検査する方法です。

厚生労働省の指針改定により、2016年から胃がん検診の際に従来のバリウム検査だけでなく、内視鏡検査も選択できるようになりました。

一般的には検診を行う施設が検査方法を選択し、それに従う仕組みになっていますが、自治体によっては患者さん自身が検査方法を選択できる場合もあります。

まずは内視鏡とバリウムのそれぞれの特徴を知り、検査方法の選択に役立てましょう。

内視鏡とは

内視鏡 バリウム

内視鏡とは、先端にCCDカメラを装着した細い管で、「上部消化管内視鏡検査(胃内視鏡検査)」に用いられる医療機器のことです。口や鼻から管を挿入し、胃の状態を直接見ながら検査や処置を行えるため、胃がんなどの早期発見が可能となります。

カメラで撮った画像を通してポリープやがんを観察して診断したり、組織を採取して確定診断を行ったり、進行度によっては検査と同時に病変の切除もできます。

内視鏡の大きなメリットは、胃の形状や色などのわずかな違いを視覚的に見られることです。胃がんは必ずしも腫瘍化しているわけではなく、赤みがあったり、逆に白くなっていたりすることもあるため、それらの見逃し予防に役立ちます。

また、内視鏡を用いた検査ではピロリ菌を発見することもできます。

ピロリ菌は、胃・十二指腸潰瘍や胃がんの原因の一つといわれているため、胃痛や吐き気などの疑わしい症状が現れたときは、医療機関で検査を行わなければいけません。疑わしい症状がない場合でも、胃がん予防のために感染の有無を知ることは非常に重要です。

以下は、上部消化管内視鏡検査で発見できる病気です。

  • 早期胃がん
  • 逆流性食道炎
  • パレット食道
  • 食道がん
  • 胃炎
  • 胃潰瘍
  • 胃ポリープ
  • 十二指腸潰瘍
  • ピロリ菌感染の有無
  • アニサキス

内視鏡検査は、基本的に寝たままの状態で行います。鼻から挿入する経鼻内視鏡と口から挿入する経口内視鏡があり、一般的に経鼻の方が苦痛が少ないといわれていますが、経口でも鎮静剤や細い内視鏡を使用することで楽に検査を受けられます。

経口内視鏡の方が経鼻内視鏡よりも画質や操作性がよいため、内視鏡検査を受ける際は経口で検査を受けるのがおすすめです。

バリウムとは

内視鏡 バリウム

バリウムとは、胃透視検査や胃X線検査に用いられる造影剤です。

バリウムを飲んで検査台の上で体の向きを上下左右に回転させ、食道から胃・十二指腸内を流れるバリウムをX線(レントゲン)で撮影することで、胃の形状や粘膜の輪郭、凹凸などに異常がないかを確認します。

バリウム検査の大きなメリットは、胃全体の形状や食道、胃の動き、食べ物の通り方がよくわかることです。胃が萎縮する様子から、内視鏡検査では分かりにくいスキルス性胃がんの発見にも役立ちます。

しかし、バリウム検査はレントゲン撮影であるため、白黒画像での診断となります。細かな色の変化などの確認は難しいことを理解しておきましょう。

以下は、バリウム検査で発見できる病気です。

  • 胃がん
  • 食道がん
  • 胃炎
  • 胃潰瘍
  • 胃ポリープ
  • 十二指腸潰瘍

バリウム検査は、内視鏡検査と比べて費用が安く済むという特徴があります。自治体が行っている胃がん検診では、条件をクリアしていれば誰でも低価格または無料で検査を受けられます

また、検査自体が簡単にできるのもバリウム検査の特徴です。医療機関へ足を運ばなくても検診車で受けることも可能であるため、より手軽に検査を済ませたい方におすすめです。

内視鏡とバリウムの違い

内視鏡検査は、先端についた超小型カメラを用いて胃の中を動画で観察するため、胃の粘膜や腫瘍のわずかな隆起、凹凸、胃の表面の模様や色の違いなどを認識できます。

それに対してバリウム検査では、飲んだバリウムを胃の中に薄く広げ、表面の凹凸や胃全体の形を静止画のレントゲンで撮影し、影絵のような写真を見て病気の可能性を探っていきます。

つまり、バリウム検査では大まかな表面の凹凸は分かりますが、平坦で凹凸がない病変や色の違いは分からないということです。

内視鏡検査では、わずかな凹凸や色の変化まで認識できるほか、検査中に空気の量を変えて粘膜の隆起や凹みを観察したり、水をかけたり、組織を採取することもできます。そのため、バリウムと比べてより精度が高い検査を行うことができます。

とはいえ、バリウム検査でも早期胃がんを発見できる場合もあります。特殊な胃がんであればバリウム検査の方が見つけやすい場合もあるため、それぞれの長所と短所をきちんと理解したうえで、検査方法を選択することが重要です。

以下は、内視鏡検査とバリウム検査の長所と短所をまとめた表です。ぜひ検査方法を選択する際の参考にしてください。

内視鏡検査バリウム検査
長所・咽頭・食道・胃・十二指腸の観察ができる
・粘膜表面のわずかな変化を詳細に観察できる
・検査と同時に組織検査ができる
・バリウム検査では分かりにくい病気も発見できる
・胃全体の形状がよく分かる
・胃下垂や胃の収縮具合が分かる
・食道や胃の動き、食べ物が通る様子を観察できる
・検査が終わるとすぐに食事ができる
短所・検査前の咽頭麻酔が苦手な方がいる
・「オエッ」となる嘔吐反射が起こることもある
・穿孔、出血などが生じることもある
・麻酔が切れるまで飲食できない
・誤嚥や排便遅延、穿孔、アレルギーなどが起こることがある
・放射線被ばく
・異常が発見された場合は内視鏡検査を受け直す必要がある
・食道や食道と胃の接合部などは観察しにくい

内視鏡とバリウムはどっちがおすすめ?

内視鏡 バリウム

会社などで行われる一般的な集団健診では、多くの受診者を低コストで検査できるバリウム検査が主流ですが、個人的に人間ドックや検診を行う場合は、自分でどちらを受けるか決めなければいけません。

上記でも紹介したように、内視鏡検査はバリウム検査と比べてより詳細な観察と診断ができます

そのため、検査方法が選択できる場面では内視鏡検査をおすすめしますが、「苦しい」「つらい」というイメージが強く、躊躇してしまうという方も少なくありません。

ここでは、内視鏡検査を選ぶべき理由を紹介します。

バリウム検査で異常が見つかると内視鏡検査が必要になる

バリウム検査で何らかの異常が発見され、要精密検査と判断された場合、あらためて内視鏡検査を行う必要があります。

日本対がん協会が2010年に行った胃がん検診のデータによると、受診者243万1,647人のうち、要精密検査と判断された方は20万7,877人(8.5%)でした。

このうち二次検査として内視鏡検査を受けた方は15万4,167人(77.4%)、そのなかで実際にがんが発見された方は2,683人(0.11%)です。

別の角度から考えると、15万人以上の方がバリウム検査と内視鏡検査の2つの検査を受けており、がんが見つかるのは2%弱という非常に効率の悪い方法が取られているということになります。

つまり、最初から内視鏡検査を受けておけば二度手間を防げるということです

内視鏡検査は胃がんの発見率がバリウムの倍以上

2022年に日本消化器がん検診学会が発表した「2019年度の検診データの集計」では、検診でバリウム検査を受けた386万9,987人のうち、胃がんが見つかったのは2,553人。内視鏡検査を受けた37万3,596人のうち、胃がんが見つかったのは609人という結果が出ています。

胃がんの発見率でいうと、内視鏡検査はバリウム検査の約2.5倍にものぼります。

造影剤によって間接的に胃の粘膜の形状のみを確認するバリウム検査と、形状だけでなくわずかな色や粘膜の隆起などを直接目で見て判断できる内視鏡検査では、どれだけ丁寧に検査を行ったとしても、これだけ発見率に差が出てしまいます。

まとめ

内視鏡とバリウムの違い、内視鏡検査を選ぶべき理由をご紹介しました。

内視鏡検査は、細い管の先端についた超小型のCCDカメラで咽頭や食道、胃、十二指腸を直接目で見て観察する検査方法です。

一方、バリウム検査はバリウムという造影剤を飲みレントゲンで撮影することで、胃全体の形状や食道の動き、食べ物の流れ方などを観察し、病気の発見をサポートします。

一般的な検診ではコスト面などからバリウム検査が行われることも多いですが、バリウム検査で異常が認められた場合はあらためて内視鏡検査を受けることになります。

そのため、どちらの方法で検査を受けるか選択できる場合は、最初から内視鏡検査を選ぶことを推奨します。

都営新宿線「曙橋駅」A2出口、都営大江戸線「若松河田駅」若松口より徒歩6分の「おうえケアとわクリニック」では、患者様に心身の負担なく内視鏡検査を受けていただけるよう、鎮静剤や鎮痛剤を使用した痛みの少ない苦しくない検査を行っております。

ウトウト眠っているような状態で検査を受けていただけるほか、細い内視鏡を使用することで術後の喉の痛みなども軽減できるため、スムーズに検査を終えることができます。

胃の痛みや吐き気などにお悩みの方や定期検診を希望される方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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