経鼻内視鏡検査の5つのデメリットと経口内視鏡との違いを解説

経鼻内視鏡 デメリット

経鼻内視鏡とは、鼻からカメラ付きのケーブルを挿入し、食道や胃などの検査を行う機材です。口からカメラを入れる経口内視鏡とは、大きさや機能性など、さまざまな点で違いがあります。

胃カメラを経験した方は、喉の苦しさで次に内視鏡検査をすることが不安だという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、経鼻内視鏡と経口内視鏡の違いを比較しながら、経鼻内視鏡にどのようなデメリットがあるのかについて解説します。

経鼻内視鏡と経口内視鏡の違い

経鼻内視鏡 デメリット

胃カメラは、口からカメラを通す経口内視鏡と鼻から通す経鼻内視鏡の2種類に分かれます

かつて胃や食道の検査はX線を透過させないバリウムを飲み、レントゲン撮影をして行っていました。しかし、この方法では患者さんの負担が大きいうえに、撮影画像も不鮮明というデメリットがありました。

内視鏡は1952年から実用化され、1985年に現在のCCDカメラが搭載されています。2002年以降はハイビジョン画像での撮影も可能になり、それ以前の検査に比べて精度が飛躍的に向上しています。

内視鏡というと経口内視鏡を指す場合が多いのですが、なぜ経鼻内視鏡が開発されたのでしょうか。ここでは、経口内視鏡のデメリットと経鼻内視鏡の特徴を紹介します。

経口内視鏡の特徴

経鼻内視鏡が開発されるきっかけになったのは、胃カメラによる患者さんへの苦痛です。苦痛に感じる主な点は以下の通りです。

  • 喉の痛みや違和感
  • 吐き気
  • 心拍数が高くなる
  • 心理的な不安

胃カメラ検査を受けると、もう二度とやりたくないと感じるほど強いストレスを受けることもあります。

不安が強くなると検査そのものに忌避感が起こり、怖くて検査に積極的になれません。

しかし、検査を行わないと病気の発見が遅れて症状が悪化する恐れがあります。そこで、経口内視鏡によるストレスを軽減する方法が検討されました。

経鼻内視鏡が開発されたのには、こうした背景があります。

経鼻内視鏡の特徴

経鼻内視鏡の最大の特徴は、挿入するカメラのコードの直径が5~6mmと細いことです。経口内視鏡が平均10mmほどの直径であるのに対して、半分ほどの大きさです。

そのため、咽頭反射が小さくなり喉に負担がかからず、検査中に会話もできるというメリットがあります

咽頭反射は嘔吐反射とも呼ばれ、喉のあたりに遺物を感知したときに反射的に吐き出そうとする生理現象のことです。

身体を傷つけるものから自分を守ろうとする本能的な働きであるとされており、特に舌の根本あたりを圧迫したときに強い反応が起こります。

嘔吐反射が酷い場合は、カメラが入っている間ずっと「吐き出したい」という衝動が治まらないため、非常につらい検査になってしまいます。

先述のとおり、経鼻内視鏡はこのときの苦痛とストレスの問題を改善するために研究、実用化された経緯があります。

そのため、口から入れる内視鏡に比べて、痛みやストレスが小さかったという感想を持つ人も多いです。

経口内視鏡で検査するとき、痛みや不安感が強ければ鎮静剤を使用します。検査後は意識が混濁するリスクが大きいため、車の運転はできません。

経鼻内視鏡ならこうした心配もなく、短時間で退院できるメリットもあります。

経鼻内視鏡が向いている事例

経鼻内視鏡 デメリット

経鼻内視鏡による胃カメラは、経口内視鏡を使ったことがあり、その際のストレスが大きかった人などに使用されます。

再度胃カメラの検査を行う際、恐怖感や忌避感が生まれて積極的に慣れない場合に有効な検査方法です。

口からカメラを入れる場合、舌根を刺激することがあります。嘔吐反射や、咳き込んだり気管に唾液が詰まるリスクもあるため、検査中も細心の注意が必要になります。

また、口を常に開け続けているというストレスに耐えられない、会話ができないことが不安な場合にも、経鼻内視鏡検査が推奨されます。

経鼻内視鏡は、治療中に口へのストレスも小さくなり呼吸がしやすくなります。このことから、経鼻内視鏡は経口内視鏡への抵抗がある患者さんに適した検査方法といえます。

経鼻内視鏡の5つのデメリット

経鼻内視鏡 デメリット

経口内視鏡に比べて嘔吐反射を抑えることができる経鼻内視鏡ですが、注意しておかなくてはならないポイントが5つあります。

場合によっては、経口内視鏡を選んだほうがよい場合もあるでしょう。

以下の5つのデメリットを考慮したうえで、経口と経鼻のどちらの検査を選べばよいかを医師に相談してみてください。

鼻の違和感がまったくないわけではない

口に比べてストレスが小さいといっても、部分的には麻酔を使用する必要もあり、違和感や痛みがまったくないわけではありません。

鼻の中は、下鼻道、中鼻道、上鼻道などが複雑に枝分かれした状態になっており、さらに上鼻甲介、下鼻甲介といったひだ状の組織も存在しています。

また、上鼻道の終わり頃から急に直径が狭くなっているため、鼻腔の壁に触れたり引っかかったりすることがあります。

なかには、痛みが酷くなると頭痛を感じる人もいます。鼻がつーんと痛くなるという感想もよく聞かれます。

最も注意すべきは、嘔吐反射を完全に抑えられるわけではないということです。

経口内視鏡より頻度が低いとはいえ、舌根に触れてしまうこともあるため、ある程度の苦しさはあるものと考えておいたほうがよいでしょう。

鼻腔内出血が起こることがある

カメラが鼻腔(鼻の穴の内部)を通過するとき、注意していても粘膜を傷つけてしまうことがあります。少量の出血や痛みを感じることは避けられません。

先述のように、人の鼻の中は非常に複雑な構造であり、一人ひとり広さや形状が微妙に異なります。スムーズに挿入できる人と、そうではない人が出てきます。

そのため、痛みを軽減するために粘膜に麻酔を使用するなどで対処します。

外科治療は限られる

胃潰瘍の治療や止血、ポリープの切除などは基本的にできません。しかし、組織の採取はできるため組織生検は可能です。

経口内視鏡は直径が1cm近くあるため、鉗子口という穴を通じてさまざまな医療機器を挿入できます。しかし、経鼻内視鏡は直径が半分程しかないため、搭載できる器具の大きさに限度が出てしまいます。

具体的には、作業を行うための鉗子アームが小さくなるため、つまんだり切り離したりする処置に向かない傾向があります。

経鼻内視鏡の鉗子を使ってポリープを切除することはできますが、安全のため、原則どの病院でも行っていません。治療を行うための鉗子も小さくなってしまいます。

経口内視鏡ならば、検査中に見つかったポリープや病変を同時に摘出可能です。時間短縮につながり、効率的といえます。

鼻腔を通せない場合もある

鼻の穴から内視鏡を挿入することができない場合もあります。これは、鼻腔の直径が経鼻内視鏡の直径よりも狭くなっている場合です。

鼻腔内の広さをあらかじめ検査することは難しく、内視鏡を通して鼻腔が狭いことが分かるケースがほとんどです。

最も細いサイズの内視鏡でも直径は5mm程であるため、それより狭い鼻腔では対処できません。

また、鼻中隔湾曲症といって、鼻が生まれつき曲がっている人にも経鼻内視鏡検査を行うことは難しいです。鼻炎や花粉症など、鼻に疾患がある場合も使えません。

むりやり押し込むことはできないため、経口内視鏡に切り替える必要があります。

経口内視鏡に比べて性能が低いこともある

経鼻内視鏡は、経口内視鏡に比べて細くなっているため、性能が落ちることがあるというデメリットがあります。

検体を取る場合に時間がかかる、胃の中を観察するために送る空気の量が少なくて時間がかかる、患部を見落としてしまう可能性があるなどです。

細くて小さい分小回りは効きますが、カメラの視野と画素も小さいため、経口内視鏡に比べて画像が荒くなってしまう場合もあります。

異常の見落としは、胃がんや大腸がんの早期発見という内視鏡検査を実施する意義がなくなることにつながります。

がんが発症すれば、患者さんの身体に負担がかかり、その後の入院や治療の費用負担も増します。

企業努力によって徐々に改善されていますが、経口内視鏡とまったく同じ性能を求めるのはまだ難しいというのが現状です。

まとめ

経口内視鏡と経鼻内視鏡には、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。どちらも、胃がんや食道がんなどの重篤な症状を早期発見するために利用します。

経口内視鏡を使うとがんの見落としが少なく、ポリープの除去ができるメリットがあります。

経鼻内視鏡は、カメラのコードを挿入するときのストレスを軽減できますが、人によっては適用できない、患部の見落としが起こり得る、外科治療はできないなどのデメリットがあります。

どちらの方法で胃カメラの検査を行うかは、本人の選択と医師の判断に頼らなくてはいけません。

おうえケアとわクリニックでは、経口内視鏡、経鼻内視鏡の両方を検査に用いており、患者さんの希望で選んでいただくことが可能です。

胃腸の不調や食中毒など、幅広い検査に対応しています。検査への不安やデメリットについて深く知りたいという方は、お気軽にご相談ください。