内視鏡でピロリ菌は見つかる?感染経路や検査方法を詳しく解説

内視鏡 ピロリ菌

みなさんはピロリ菌をご存じですか?

ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌の一種で、内視鏡検査(胃カメラ)の際に発見される場合が多いです。一度は名前を耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

ピロリ菌は胃がんの発生原因の一つとして挙げられています。胃がんのほかに、慢性胃炎や胃潰瘍などの病気、胃もたれや吐き気といった体調不良の原因にもなります。

そのため、早期の発見と除菌治療が大切です。この記事では、ピロリ菌の概要と感染経路、検査方法について詳しく解説します。

「ピロリ菌とは具体的に何なのか」「ピロリ菌の検査方法が知りたい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

ピロリ菌とは

内視鏡 ピロリ菌

冒頭で述べたように、ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌の一種で、正式名はヘリコバクター・ピロリといいます。

ヘリコとは、旋回や螺旋という意味を持ち、ヘリコプターのヘリコも同じ意味を持ちます。ピロリ菌はひげの部分を回転させながら移動する特徴から、このような名前がつけられました。

バクターはバクテリアから、ピロリについては胃の出口を指すピロリスという言葉から取られており、ピロリ菌が初めて発見したのも胃の出口付近からでした。

ここでは、ピロリ菌の歴史や特徴について詳しく解説します。

ピロリ菌の歴史

ピロリ菌は、西オーストラリア大学のロビン・ウォーレン名誉教授とバリー・マーシャル教授によって発見されました。

1979年、当時ロイヤルバース病院の病理医だったウォーレンは、胃炎患者の胃の粘膜に小さく曲がった未知の細菌(ピロリ菌)を発見します。

その後、消化器内科研修医であったマーシャルとの共同研究により、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を患っている多くの患者さんにピロリ菌が生息していることを確認しました。

1982年にはピロリ菌の分離培養に成功し、マーシャル自らがピロリ菌を飲み、急性胃炎が起こることを確認したというエピソードがあります。

これまで、消化性潰瘍は生活習慣やストレスが主な発生原因として考えられていました。しかし、二人の研究により胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍はピロリ菌の感染が引き金となることを明らかにしました

この発見はピロリ菌を除去する除菌治療、胃がんや再発を繰り返す胃潰瘍と十二指腸潰瘍の治療方法の確立に大きく貢献します。二人のピロリ菌発見の功績は高く評価され、2005年にはノーベル医学生理学賞を受賞しています。

ピロリ菌の特徴

ピロリ菌の特徴として、酸素が存在する大気中では発育できない点が挙げられます。また、酸素にさらされると徐々に死滅し、乾燥にも弱いです。

ピロリ菌の大きさは、0.5×2.5〜4.0μmほどで、数本のべん毛を持ちます。このべん毛をスクリューのように回転させることで、らせん状の本体を前進、逆回転させることで後退することも可能です。

ピロリ菌はドリルのように動くため、移動時に胃の粘膜や壁に傷をつけ、胃壁が酸によるダメージを受けやすい状態にしてしまいます。

ピロリ菌が快適に活動できる環境は、pH6〜7(弱酸性~中性)です。発見されるまでは、強酸性の環境に細菌は存在しないと考えられていました。しかし、ピロリ菌は強酸性下である胃の中を自由に移動できます。

胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することで、強酸性下の胃で生きていくことを可能としています。

ピロリ菌の感染経路

内視鏡 ピロリ菌

ピロリ菌に感染する原因はいまだに明確になっていませんが、主な原因として口からの感染や乳幼児期の生活環境が挙げられます。

上下水道が十分に整備されていなかった時代に、井戸水や沢の水を飲んだ経験がある方はピロリ菌に感染している可能性が高いです。

しかし、現代の日本においては、上下水道の整備が行き届いているため、若い世代の感染率は年々低くなっています。

大人になってからの食生活でピロリ菌に感染する可能性は低いですが、乳幼児期のお子さんは胃酸の酸性が弱く免疫機能が低いため、注意が必要です。

ピロリ菌に感染した親からの口移しや、感染した手で触れた食べ物によって感染する可能性があります。

ピロリ菌が引き起こす病気

内視鏡 ピロリ菌

ピロリ菌に感染した場合、必ずなんらかの病気を引き起こしたり、明確な症状が現れたりするわけではありません。症状が現れるとしたら、ピロリ菌によって引き起こされた病気による症状である可能性が高いです。

しかし、病気を引き起こさない可能性があるからといって、油断はできません。ピロリ菌感染者の多くに胃炎が起こるとされており、慢性的な胃炎が続けば胃の粘膜の防御力が弱まっていきます。

そのため、塩分の多い食事やストレス、発がん性物質による影響を受けやすく、無防備な状態になっている可能性が高いです。

ここでは、ピロリ菌が引き起こす代表的な病気を紹介します。

①胃炎

胃炎には急性胃炎と慢性胃炎の2種類があります。

急性胃炎は、アルコールや香辛料といった刺激物の影響で引き起こされるケースが多いです。一方で、慢性胃炎の多くはピロリ菌の持続感染による胃の粘膜の炎症によって引き起こされます。

感染が長く続くと、ピロリ菌の感染部位が広がり、最終的には胃の粘膜全体に感染します。この状態を、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼び、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こす原因となり、一部は胃がんに発展する可能性もあります。

ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、除菌治療で改善できるため、早期の発見と治療が大切です。

②胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃の粘膜がただれて崩れ、深く傷つくことで引き起こされる病気です。

ピロリ菌によって引き起こされた慢性胃炎の影響で、胃の粘膜の防御力が弱まります。食事や胃酸によって、胃の粘膜が継続的なダメージを受けることで胃潰瘍・十二指腸潰瘍へと発展します。

主な症状として、みぞおちや腹部の痛み、胸やけや食欲不振が挙げられ、これらの症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

以前は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍は薬の服用による治療が主流で、再発が多い病気でした。また、再発を防ぐためには長期での薬の服用が必要であり、患者にとっても大きな負担になっていました。

現在は、除菌治療の登場により再発の可能性を最小限に抑えるとともに、短期間での治療が可能です。

③胃がん

胃がんは、胃の粘膜内の細胞が何らかの原因でがん細胞へと変化し、増殖を繰り返す状態のことです。

がんは日本人の死因の第1位であり、胃がんは大きな割合を占めています。

胃がんは、ピロリ菌に感染し炎症を引き起こした胃の粘膜から発生する場合が多く、胃炎が進行してしまうとそのリスクはより高まります。

除菌治療でピロリ菌を除去することはできますが、胃がんのリスクが完全になくなるわけではありません。

ピロリ菌を除去する前にすでに胃炎の状態が進んでいる場合、除菌後も胃がんのリスクは残ります。

ピロリ菌の除菌治療は、胃がんの発生率や死亡率を減らす効果が期待できます。しかし、除菌が成功したことで安心し、胃がん検診を受けなくなる方が多いです。

そのため、除菌治療後も油断せずに、定期的な胃がん検診を受けることが大切です。

ピロリ菌の検査方法

内視鏡 ピロリ菌

ピロリ菌の検査方法は、大きく分けて内視鏡を使う検査と使わない検査の2つです。

内視鏡を使う検査は、胃の粘膜または組織の一部を採取・診断し、内視鏡を使わない検査は血液や尿、呼気などを使用して診断します。

受診する医療機関や患者の希望によってピロリ菌の検査方法が異なるため、以下で紹介する検査方法を参考に検査を受けてみてください。

☑︎培養法

培養法は胃の粘膜を採取し、ピロリ菌が過ごしやすい37℃の環境下で5日〜7日培養して判定する検査方法です。

培養法はピロリ菌の判定に優れていますが、熟練した手技を必要とするため、医療機関によって精度に差が出る場合があります。

近年では、ピロリ菌を培養できる検査センターの開発が進み、より安定した判定が可能になりました。

☑︎迅速ウレアーゼ試験

迅速ウレアーゼ試験は、ピロリ菌が持つ尿素を分解する酵素であるウレアーゼを利用して判定する検査方法です。

採取した粘膜をpH指示薬に添加し、色の変化を観察することでピロリ菌の有無を判定できます

迅速ウレアーゼ試験は、比較的簡単かつ短時間で行える検査方法のため、内視鏡検査時に行われるケースが多いです。

しかし、除菌治療を受けた後の検査の場合、ピロリ菌の検出感度が低くなることが欠点として挙げられます。

☑︎組織鏡検法

組織鏡検法は、採取した胃の組織に染色し、顕微鏡でピロリ菌の有無を観察する検査方法です。

ピロリ菌の鏡検には100倍以上の拡大観察が必要で、他の菌と区別するために特殊な染色が使用されます。

組織鏡検法は内視鏡検査時に行われ、慢性胃炎の炎症状態の評価にも有効です。

組織鏡検法は、診断する医師の経験や生体個数、スライドの枚数の影響を受けるため精度に差があります。

☑︎尿素呼気試験法

尿素呼気試験法は、ピロリ菌が持つウレアーゼを利用した検査方法です。

尿素を含んだ診断薬を服用し、服用前後の呼気を基にピロリ菌感染の有無を判定します。尿素呼気試験法は、胃全体のピロリ菌感染状況を把握できるため、除菌治療後の判定にも有効性が高い特徴があります。

尿素呼気試験法は簡単かつ高精度であり、現在主流のピロリ菌検査方法の一つです。

☑︎抗体測定

抗体測定は、血液や尿中に存在する抗体の有無を調べる検査方法です。5分〜15分ほどで判定ができるため、定期健診で利用されています。

ピロリ菌に感染すると、体内で菌に対抗するための抗体が作られます。ピロリ菌の抗原と抗体を反応させることで、感染の有無を検出可能です。

抗体測定の特徴として、過去の感染も認識できる点が挙げられます。

そのため、除菌治療後も一定期間陽性反応が持続し、現在の感染状況が必ずしも判定できるとは限らないため注意が必要です。

☑︎糞便中抗原測定

糞便中抗原測定は、糞便中のピロリ菌を検出する検査方法です。

ピロリ菌は便中に排泄されるため、糞便の一部を採取し調べることで、感染の有無が分かります。抗原を直接検出する特性上、高精度かつリアルタイムで菌の存在の確認が可能です。

まとめ

この記事では、ピロリ菌の概要と引き起こす可能性のある病気、検査方法について解説しました。

ピロリ菌は、特定の症状が現れないため気づかないうちに感染している場合があります。感染者数は減少傾向にありますが、免疫機能が整っていない乳幼児は感染リスクが高いため注意が必要です。

ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの病気を引き起こすリスクがあり、放置すれば重症化する可能性が高いです。早期の発見であれば、除菌治療で改善できるケースもあります。

ピロリ菌の除菌治療は、胃がんの発生率や死亡率の低下に効果的ですが、病気のリスクが完全になくなるわけではありません。

除菌前の胃の状態次第ではリスクが残るため、一度除菌治療を受けたからと油断せずに、定期的に検査を受けることをおすすめします。

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ピロリ菌だけではなく、胃炎や胃潰瘍、胃がんの検査にも対応し、悩みがある方に安心して受診していただける環境を整えています。

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