よくある大腸の症状
よくある大腸の症状(疾患)と、主な原因やリスク因子をご紹介します。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)とは、腸の運動、腸の神経の感受性、脳がこれらの機能の一部をコントロールする方法など、体の正常な活動の機能が損なわれる疾患で、一般に機能障害に分類されます。
【主な症状】
- 腹痛や腹部不快感
- 便通異常(下痢・便秘)
- 腹部膨張感
- 腸鳴り(腸鳴)など
【考えられる原因・リスク因子】
- 腸の運動異常
- 感染性腸炎
- ストレスや自律神経バランスの乱れ
- 遺伝
- 運動不足
- 脂質や糖質の多い食事
- カフェインを多く含む飲食物や刺激物
- アルコールの過剰摂取
- 喫煙
過敏性腸症候群の有病率は10%〜20%といわれており、命に関わる病気ではありませんが、その症状のために日常生活に支障をきたすことがあります。
患者様の症状に合わせて、生活改善の指導、食事療法、運動療法、薬物療法、心理療法で治療を行います。
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(もっとも内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。
【主な症状】
- 下痢
- 血便
- けいれん性または持続的な腹痛
- 発熱
- 体重減少
- 貧血
- 腸管以外の合併症(皮膚、関節、眼)
【考えられる原因・リスク因子】
- 免疫反応の異常
- 腸内細菌
- 遺伝的因子
- 食生活の変化
潰瘍性大腸炎の原因は明確にはわかっていませんが、年齢・遺伝・非ステロイド性抗炎症薬の使用などの要因がリスクとされています。
治療は主に薬物療法が行なわれますが、症状によっては血球成分除去療法も用いられ、重症の場合や薬物療法が効かない場合は外科手術(大腸全摘術)が必要となります。
大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸の粘膜層(もっとも浅い層)の一部がイボのように隆起してできたもので、腫瘍性ポリープ(大腸がん・腺腫)と、非腫瘍性ポリープ(炎症性ポリープ・過形成性ポリープ・過誤腫性ポリープなど)に分類されます。
【主な症状】
- 便通異常(下痢・便秘)
- 血便
- 腹痛
- 腹部の不快感
- 腸閉塞
【考えられる原因・リスク因子】
- 加齢
- 食生活などの生活習慣
- 過度なアルコール摂取
- 喫煙
大腸ポリープの約8割は腺腫と呼ばれる良性のものですが、その一部は何らかの刺激を受けてがん化する可能性があります。
検査で大腸ポリープが発見された場合、ポリープの大きさや数、形状、位置、および病理学的特徴(腫瘍性、非腫瘍性など)に基づいて治療法を決定しますが、主に内視鏡治療と手術です。
定期的に検査を受け、早期発見をし適切な治療を受けることが大切です。
大腸がん
大腸がんとは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。
【主な症状】
- 血便
- 排便習慣の変化(便秘・下痢)
- 便が細くなる(狭小化)
- 残便感
- 貧血
- 腹痛
- 嘔吐など
考えられる原因・リスク因子
- 喫煙
- 飲酒
- 肥満・運動不足
- 加齢
- 加工肉や赤肉の摂取
- 家族の病歴(家族性大腸腺腫症・リンチ症候群)
大腸がんの多くは大腸ポリープから発生していますが、早期のものは無症状で、進行すると症状が出現することがあります。
治療はがんの進行の程度を示す病期(ステージ)やがんの性質、体の状態などによって異なり、内視鏡治療、手術(外科手術)、薬物療法、放射線治療、対症療法などがあります。
大腸カメラ検査などで早期発見することが重要ですので、定期的な検診をおすすめします。
クローン病
クローン病は主として若年層にみられ、口腔から肛門にいたるまでの消化管のどの部位にでも炎症や潰瘍が発生する可能性のある疾患です。
小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が好発部位とされ、非連続性の病変を特徴とします。
【主な症状】
- 腹痛
- 下痢
- 発熱
- 下血
- 腹部腫瘤
- 体重減少
- 全身倦怠感
- 貧血
- 腸管の合併症(瘻孔、狭窄、膿瘍など)
- 腸管外の併症(関節炎、虹彩炎、 結節 性紅斑、肛門部病変など)
【考えられる原因・リスク因子】
遺伝的な要因、麻疹ウイルスなどの感染、腸管粘膜に異常な反応を引き起こす食事の中の成分、腸管の微小血管の血流障害などが報告されてきましたが、いずれもはっきりと証明されたものはありません。
しかし最近の研究では、何らかの遺伝的な素因を背景として、食事や腸内最近に対して腸に潜んでいるリンパ球などの免疫を担当する細胞が過剰に反応して病気の発症や増悪に関与していると考えられています。
治療法としては、栄養療法・食事療法、薬物療法、血球成分除去などの内科治療が行われ、高度の狭窄や穿孔、膿瘍などの合併症に対しては外科治療が行われますが、狭窄に対しては内視鏡的治療が行われるもあります。
虚血性腸炎
虚血性腸炎とは、大腸への血流の流れが一時的に悪くなり、大腸壁が虚血に陥り、粘膜に炎症やびらん、潰瘍などが起こる疾患です。
【主な症状】
- 腹痛
- 下痢
- 血便
【考えられる原因・リスク因子】
- 動脈硬化性疾患
- 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)
- 便秘
軽症の虚血性腸炎は通常、食事療法で自然治癒しますが、重症の場合には入院して絶食・点滴を行い、抗生剤を使用することもあり、狭窄型や壊疽型の場合は外科手術が必要になります。
早期発見するために、特にご高齢の方や生活習慣病のある方には、大腸カメラ検査をおすすめします。
大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)
大腸憩室症とは、大腸の壁の一部が外側に突出し袋状のへこみ(憩室)が多数できる状態で、大腸の壁の強さを腸管内圧のバランスが崩れることでできると考えられています。
【主な症状】
- 腹痛
- 便通異常(下痢・便秘)
- 吐き気・嘔吐
- 血便
【考えられる原因・リスク因子】
- 食物繊維の摂取不足
- 運動不足
- 肥満
- 喫煙
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、コルチステロイド、オピオイドの副作用
- 家族歴
- 老廃物が通るときの通り方
- 加齢に伴う大腸の衰え
- 便秘による腹圧の上昇
大腸憩室症は多くの場合無症状で、大腸カメラ検査時に偶然発見されることがほとんです。
症状のない人に対しては特に治療は行なわず、高植物繊維食を摂取することで便秘の解消を心がけます。
憩室炎および憩室出血の場合は絶食による腸管安静が基本となり、入院して絶食・点滴治療を行います。
憩室炎の場合、上記の治療に加えて抗菌薬投与を行い、必要であれば、外科的手術や腫瘍ドレナージなどの追加治療を行うことがあり、憩室出血の場合は内視鏡的止血術や動脈塞栓術が行なわれます。