内視鏡検査で炭酸ガスを使う理由とは?目的やメリットを紹介
内視鏡検査は、カメラが付いた柔軟なチューブ状の医療器具を体内に通して行う検査であり、従来は消化管を広げるために検査時に空気を注入していました。
近年は、空気ではなく炭酸ガスを使用するケースが増えており、患者さんの体の負担を軽減することで、内視鏡検査のハードルを下げる試みをしているクリニックも珍しくありません。
この記事では、内視鏡検査時に炭酸ガスを使用する理由や、メリット・注意点について解説します。
内視鏡検査における炭酸ガスの使用とは?
内視鏡検査を行う際、大腸などの消化管が萎んだままでは、十分な視野を確保できず、疾患の原因となる異常の発見に遅れてしまう可能性があります。
そのため、内視鏡の先端から空気や炭酸ガスなどを体内の腔内に注入し、膨らませたうえで検査が行われます。
かつての内視鏡検査では、炭酸ガスではなく空気が使用されるのが一般的でした。しかし、検査終了後に内視鏡とともに空気も抜く必要があり、深いところにまで達した空気の吸い取りが困難なため、長時間の検査では膨満感や不快感が起こりやすいリスクがありました。
炭酸ガスの場合、空気や酸素に比べて腸管内での吸収が速いため、ガスの吸収によるリスクを減らすことが期待されます。
炭酸ガスを内視鏡検査で使用する利点は多くあり、手術にも使用されています。
炭酸ガスを使った内視鏡検査が日本で普及した背景
1980年代頃、欧米ではすでに炭酸ガスを使用した内視鏡検査が行われていました。
炭酸ガスを使った内視鏡検査が日本で普及したきっかけとしては、1985年に日本で行われた「非浸漬法による大腸内視鏡検査(いわゆる『空気法』)の普及に関する研究会」が挙げられます。
当時の内視鏡検査では、大腸内視鏡においては浸漬法が一般的であり、患者さんに対して大量の水を飲ませることで腸管を拡張し視野を確保していました。しかし、この方法は患者さんにとって負担が大きく、不快感や疼痛を伴うことがありました。
1985年に開催された研究会では、炭酸ガスを用いた非浸漬法内視鏡検査の有用性が報告されました。その内容は、炭酸ガスを腸管に注入して腸管を拡張することで、視野を確保できるため、水を飲ませる必要がなくなり、患者さんの負担が軽減されるというものです。
この研究会の報告を受けて、炭酸ガスを使った非浸漬法内視鏡検査が日本国内で普及し始めました。
その後、技術の進歩や改良により、炭酸ガスの使用量や注入方法が最適化され、現在では内視鏡検査の主要な方法の一つとなっています。
内視鏡検査で炭酸ガスを使用するメリット
炭酸ガスは、内視鏡検査だけでなく腹腔鏡手術でも導入されています。
緊急出血が起きている場合には、内視鏡診断が難しい場合もありますが、炭酸ガスの使用により検査同日に経肛門小腸内視鏡検査が可能です。
内視鏡検査で炭酸ガスを使うメリットを詳しくご紹介します。
検査時の違和感を軽減できる
炭酸ガスは、体内で速やかに吸収される性質があります。
内視鏡検査中に腸管に炭酸ガスを注入した場合、体液中に溶解して二酸化炭素として吸収されます。
この吸収の速さが、体内にガスが滞留する時間を短縮し、術後の膨満感や不快感の軽減につながる理由の一つです。
また、炭酸ガスが持つ血管拡張作用による血管拡張によって、組織の麻痺や炎症反応の抑制、違和感の軽減につながる可能性があります。
ただし、患者さん個人の感受性や状態によっては、違和感が生じるケースもあります。
検査後、食事をしても問題がない
内視鏡検査の種類によっては、空気の注入によって術後の嘔吐反射や膨満感が起こる可能性があります。
体内に迅速に吸収される炭酸ガスの場合、検査後の不快感や膨満感が短時間で解消につながるため、基本的には食事が可能です。
ただし、最初は水分をとりながら様子をみて、体調が優れないようなときにはなるべく消化のよい食べ物を食べるようにしましょう。
炭酸ガスを使用した内視鏡検査の流れと注意点
内視鏡検査を受ける際は、食事制限や体調管理などの準備が必要です。
実際に必要な準備については、検査を受ける前に医師に確認しましょう。
検査前日までの準備
内視鏡で大腸カメラ検査を行う前日は、消化の良い食事をとりましょう。
推奨される食事 | 控えるべき食事 |
---|---|
・検査用のレトルトメニュー ・おかゆ ・パン(ジャム、バターはNG) ・素うどん(具、薬味なし) ・ ゼリー ・水 ・お茶 ・肉(鶏モモ、むね肉) ・魚(淡泊な白身魚) ・芋(じゃがいも、長いも) ・果物(バナナ・りんご) など | ・キノコ類 ・粒や種のあるもの(キウイ、スイカ、ゴマなど) ・植物性の皮(トマトやナスなど) ・食物繊維(飲料水も含む) ・脂肪分の多い食事(肉、魚) ・アルコール ・牛乳などの乳製品 ・果実入りのジュースなど |
特に、検査前日は水分量を多めにとり、検査当日までに腸内をなるべく綺麗にしておくことが大事です。
患者さんの状態によっては、下剤を使用せずに検査を受けられる可能性があるため、検査前日や当日は普段より多めの水分を摂取しましょう。
検査前日は、21時頃に病院から指定された薬を服用して就寝します。そのため、夕食は基本的に20時までに済ませましょう。
常用している薬については、服用している旨を伝えたうえで医師へ相談してください。
抗血小板薬や抗凝固薬などを服用している場合は、内視鏡検査を実施できない可能性があります。
その他の薬については、医師にあらかじめ相談して服用の有無を確認しましょう。
検査当日
検査当日は、基本的に食事を控えていただきます。
水分補給は問題ありませんが、予約の3時間前からは控えるようにしてください。
検査前には、洗浄液を1〜2時間程度の時間をかけて飲んでいただきます。
麻酔とガスの注入
検査室に移動したあと、麻酔スプレーやジェルを用いてで麻酔を行い、内視鏡をスムーズに挿入できるようにします。
柔軟な管状を喉・食道・胃などに通し、炭酸ガスをゆっくりと注入します。
腸管内に炭酸ガスが充満して腸管が広がってから、内視鏡の進行と観察を行う流れです。
検査終了後
内視鏡検査の終了後は、CO2の送気を停止するため、お腹の張りが軽減されます。
それでもお腹の張りが気になる場合は、炭酸ガスが自然と抜ける体操を行うケースもあります。
また、検査終了後からしばらくは少量の水分をとって様子をみましょう。
体調に問題がなければ、食事に関する制限はありません。
施術で鎮痛剤を使用した場合には、自動車や自転車の運転を控えていただきます。
内視鏡検査で手術を行なった場合のケアと注意点
内視鏡検査で、ポリープの切除や組織採取などの施術を受けた場合は、以下の点に注意してください。
1週間ほどの食事制限
1週間ほどの食事制限があるため、一般的な検査と同様に少量の水分を補給しながら様子をみてください。
消化の良い食事で、胃になるべく負担がかからないように配慮する必要があります。
刺激物や香辛料、脂肪分が多い食事、生もの、アルコール、炭酸類などは控えてください。
また、便秘になりやすいため水分もしっかり行いましょう。
薬の服用について
薬については、病院から以下のものを処方されることがあります。
- 抗生物質
- 整腸剤
- 消炎鎮痛剤
1〜5日間分を処方される場合があるため、用法用量を守り服用してください。
激しい運動の制限
検査当日は安静にしていただくため、散歩やストレッチなどの軽め運動は翌日以降からしていただけます。
お腹に過度な圧力をかけた場合、出血するリスクがあるため、検査後から1週間程度は激しい運動を控えてください。入浴に関しても、1週間程度はシャワー程度に留めるようにしましょう。
また、長時間の移動については、出血するリスクが高くなるため、旅行や出張における飛行機での移動はなるべく避けてください。
出血のリスク
内視鏡検査の直接処置でポリープの切除を行なう場合、出血のリスクがあります。
ポリープの切除をした場合、検査翌日に受診しなければならないため、絶食をしていただきます。
手術後、便に少量の血が付着する程度であれば大きな問題はありませんが、出血量が増えてきた場合は速やかに受診してください。
内視鏡検査時のポリープの切除に関しては、カウンセリングの際に医師から注意点が伝えられるため、不安な点があればその時点で細かく質問するようにしましょう。
まとめ
炭酸ガスを用いて行う内視鏡検査は、検査中や検査後の腹部膨満感の軽減につながるため、患者さんにとって大きなメリットがあります。
内視鏡検査は、がんの発症の原因とされるポリープの発見につながり、検査時にそのままポリープを切除してサンプルを採取するケースもあります。
「おうえケアとわクリニック」は、胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査を専門とし、さまざまな疾患の危険因子の発見や患者さんにとって最適な治療計画で、将来の健康に貢献するクリニックです。
炭酸ガスを用いた内視鏡検査で、ご自身の健康としっかり向き合いたい方は、ぜひこの機会に「おうえケアとわクリニック」までご相談ください。