内視鏡検査の費用は?保険の有無と検査の目的による違いを解説
初めて内視鏡検査を受ける方のなかには、どれくらいの費用がかかるかを事前に把握しておきたいと考える方は多いのではないでしょうか。
内視鏡検査の費用は使用する機材や目的、保険の有無で大きく変わります。この記事では、さまざまなケースの費用について詳しく紹介します。
内視鏡検査の費用
内視鏡検査にかかる費用は、国によって定価が定められています。胃カメラの場合は概ね6,000〜15,000円で、内訳は以下の通りです。
- 事前の血液検査:2,000〜3,500円
- 胃カメラの実施費用:4,000円
- 病理組織検査:3,500〜7,000円
- ピロリ菌検査:700円
大腸カメラの場合は8,000〜30,000円で、内訳は以下の通りです。
- 事前の血液検査:2,000〜3,500円
- 大腸カメラの実施費用:5,000円
- 病理組織検査:3,500〜7,000円
- 大腸ポリープの切除に掛かる費用:17,000円
胃カメラに対して大腸カメラの実施費用が高くなるのは、食道から胃に掛けての長さより直腸から盲腸までのほうが長いからです。
加えて、腸は食道と違って複雑に湾曲しています。カメラのコードを慎重に扱う技術が必要になるため、費用に差が生じます。
検査費用に差が出る理由・保険の有無
定価があるにもかかわらず、内視鏡検査の費用にばらつきがある理由は医療保険です。
保険が適用されれば個人は3割負担ですが、適用されなければ全額個人の負担になります。検査の目的や検査中に使う薬品の種類により、細かく変動します。
また、加入している保険によっては、1割~2割負担の場合もあります。
保険が適用されるのは、がんやその他の病気の疑いがあり、必ず行わなくてはならないと判断された場合の検査です。
患者さんの命に関わる場合と思ってよいでしょう。つまり、検査を怠ったことで病気が進行し、健康に大きな影響を与えてしまうケースです。
がんの疑いがあるかどうかは、血液検査を通じて分かります。一年に一回健康診断を受けていれば、異常があったときに再検査の通知が届きます。
その際、内視鏡が実施されることもあります。あるいは下痢が続く、出血や痛みが続いているなどの自覚症状がある場合も保険適用になります。
医療保険の対象になるのは、医療行為という患者さんの健康維持を目的とした施術のみであるため、美容整形など一部の外科手術は保険適用外となります。
保険が適用されない場合は、自由診療で検査を受けなくてはいけません。
自由診療とは、内視鏡検査を受けて健康維持につながると医師が判断していない、または患者さんが個人の判断で受診する際に使われます。
病気があるかどうか分からない状態で定期的に受けている人間ドッグなどの検査は、これに該当します。
保険適用時の費用
保険が適用される場合でも、検査の段階によって最終的な費用総額は異なります。内視鏡の検査は、大きく3つの段階に分かれています。
- 検査を行い、異常が発見されず終わる
- 検査を行った結果、異常が発見され生体検査が実施される
- 生体検査の結果、がんなどが発見されて除去手術が行われる
それぞれの費用の違いを、3割負担を想定して紹介します。
異常がなく検査だけで終わる
事前の血液検査と内視鏡検査の実施費用だけで済むため、胃カメラの場合は6,000円、大腸カメラの場合は7,000円程度です。
異常が見つかり生体検査を実施
異常が見つかった箇所から検体を採取し病理検査にかけるため、必要な費用は10,000〜20,000円です。病理検査は非常に手間がかかるため、実際にいくらになるかは症状によって異なります。
がんが見つかり切除を行う
胃、または大腸に内視鏡を入れて患部の切除を行うための費用は、20,000〜30,000円です。一度に取らなくてはいけないがんの大きさや数によって、実際の費用が変わります。
検査中に使う薬品や技術による加算の違い
内視鏡検査の費用は、薬品の種類やカメラの精度によっても変わります。
定価があるといっても、あくまで目安です。自分が検査を受ける際、いくらくらいになるのかよく分からない方も多いかも知れません。
医療機関に支払う金額は、診療報酬計算に関わる点数のつけ方によって決まります。1点につき10点が加算されていき、最終的な合計点数×10が検査費用の総額です。
ここでは、内視鏡の定価に加えて加算分となる項目を紹介します。
各種薬品にかかる加算分
内視鏡検査のために薬品を使うことがあり、加算分は140円です。
薬品を使う目的は、粘膜の表面につく泡を消したり、一時的に胃の動きを止めたりして、胃壁や腸壁の状態を観察しやすくするためです。
どの薬品を使うかは、患者さんの状態によって異なり、検査を行う医師によって判断されます。
自分に必要な薬品は実際に検査するときまで分かりませんが、自己負担3割なら40円程度であるため、大きな加算ではありません。
静脈麻酔や鎮静剤の加算分
検査中の苦痛を軽減するために麻酔や鎮静剤を使用する場合、60〜540円の追加費用が必要になります。自己負担率が3割の場合は、20〜160円です。
通常は、喉の痛みを軽減するための液体麻酔を使いますが、緊張が強い場合などは静脈麻酔や鎮静剤を用います。
一度胃カメラの経験があり、その際のストレスで検査前に過度に緊張してしまう患者さんに対して用いられるのが一般的です。
しかし、麻酔のアレルギーや既往歴のある方は使用できません。その際は、検査前に医師に伝えるようにしてください。
画像処理にかかる加算分
最新の内視鏡機材で特殊な画像処理を行えるものを使う場合、別途費用がかかります。これをIEE(画像強調内視鏡)といいます。
NBIや富士フイルムなどが開発した技術で、これまで見落とされていた小さな病変も見つけやすくなりました。
ズーム機能付きの内視鏡でこの技術を用いた場合、加算として2000円が必要です。ちなみに、経鼻内視鏡にはこの機能は搭載されていません。
粘膜に着色するための加算分
胃を観察しやすくするために、青い液体を胃の中に散布する処置があります。粘膜点墨法といい、粘膜の凹凸がよりはっきりと観察できるため、病変の早期発見につながります。
青い色を出すための塗料であるインジゴカルミンを使用すると、600円の追加費用が必要です。
胃の場合は青ですが、食道に腫瘍の疑いがある場合の検査にはヨード液という赤い色の薬液を使います。こちらも同様に600円の加算です。
生体検査にかかる費用
内視鏡検査を通して胃がんや食道がん、大腸がんが疑われた場合は、組織を取り出して生体検査にかけなくてはいけません。
すでに述べたように、生体検査は非常に手間がかかります。
ポリープを除去した組織をもとに、さまざまな試薬を用いてプレパラートを作成します。
この際に使う試薬の種類と、作業にあたる技師と診察を行う医師の人件費などによって、13,200円の診療料が必要になります。
3割負担の場合は3960円で、加えて再診料が請求されます。
内視鏡検査を受けるメリット
内視鏡検査を受けるメリットは、がんの発症を防ぐことや、がん治療にかかる高額な出費をなくすことです。
それ以外にも、潰瘍や炎症、静脈瘤といった病気を早期に発見することで、後にかかる治療費を安く抑えることができます。
内視鏡検査を受けることで、がんや重たい病気にかかった際にかかる出費のリスクを下げることが可能です。
まとめ
内視鏡検査にかかる費用は、保険が適用されるかどうかによって変わります。
2023年現在の日本の医療保険では、1~3割負担までの段階に分かれています。一般的には3割負担ですが、保険が適用されない自由診療なら全額自己負担になってしまいます。
検査を受けた結果、生体検査を行わなくてはいけなくなったり、ポリープやガンの切除をする場合は、その分の費用がかかります。
とはいえ、最大でも16,000円程度の費用で検査は受けることができます。検査の頻度は2年に一度程度であり、既往や異常がない場合はさらに少なくなります。
大切なのは、内視鏡検査を受けることでがんの早期発見につながり、後々必要になる医療費や入院費用の負担を軽減できるということです。
がんの治療にかかる費用と比較すると、検査費用はさほど大きな出費とはいえません。ぜひこの機会に、内視鏡検査の受診をご検討ください。